ガラスのサロン

「物には、人の気持ちが通じるから、大切に扱えば応えてくれるのよ。」明るく優しい声が心に沁みて、顔を挙げました。、ひな祭りを前にお雛様が転んでいたり、最近、好き嫌いが激しくなって、どこか冷たくなっていた私。

以前よく立ち寄っていた古本屋さんも、「もうない・・」と、いつの間にか思い込んでいたらしく、いつものように通りすぎてから、「まだ、あった!」と気づき、Uターンして今日はお店の中に入ってみました。店内を歩きながら「気持ちを変えないとね。」と言い聞かせていました。立ち止まると、高価なものが展示してあるガラスのショーケースの前にいました。ガラスが鏡のように感じられて、顔を近づけて覗き込みました。

上の段には、私が最近入手した幻の第3巻に収録されていて、本の題名にもなっている作品のひとつの初版本。

隣には、「金閣寺」のやはり初版本が並んでいました。

そして、屈んで下の段を見ると、「シンデレラ」という題名のリトグラフのようなものが…靴を履いている場面です。

ガラスケースのサロンには、ゆったりとした時間が流れていて、どの本も大切にされて、守られている自信からか、落ち着いているように見えました。過去の持ち主のことをお喋りしているようでもあり、オリジナルの音色で演奏会かもしれない。確かに調べが奏でられていました。

生前に交友関係があった作家同士の本が、仲良く並んでいるのをみると、やはり物も本も生き続けているのかな、と思えるようになって・・・冷たい心が温かくなってきました。

春雨が降る日でした。