砂漠の精

以前何か調べものをしていて購入したあと、殆ど読んでいなかった、「植物の不思議な力=フィトンチッド」(神山恵三・B・P・トーキン著/講談社)を開いてみました。

専門的で難しそうだなと眺めていると、別所梅之助さんの「香料を採るアラビア人」の挿絵が絵本のようで、思わず読んでしまいました。石油について、神山さんの自称輪をかけた拡大解釈がおもしろいです。

   (石油は)はるか昔から繁茂していた
   これら芳香性の植物から放出された物質が、
   気が遠くなるような永い時間をかけて、
   貯えられたものである―

そして、私の中で黒い衣装の砂漠の妖精のイメージができあがってしまいました。

国旗の黒は悲しみと苦しみの歴史を象徴している場合があると、聞いたことがありま
すが・・・例えば黒い土の方が肥沃だったり、石油も炭も、書道の墨も黒。砂漠の精の黒はプラスイメージです。

 

砂漠の精は黒い光沢のある衣裳で、森のブルーヘイズのベールを肩に纏っています。乳香や没薬の香料の樹脂をつないでネックレスにして、ヴェチヴァーのような香り高い根で編んだサンダルを履いて、羊歯やオークモスでできている舞台に立ちます。

深尾須磨子さんは生前レバノン杉にあこがれ、訪ねて行き、「聖なる杉」に詩を捧げたそうです。(愛のポプリ/熊井明子著/講談社文庫)

  ・・・その香気に宇宙をいぶし 
  ゆく雲にうそぶく千古の巨人・・・

強い詩ですね。

砂漠の精は、宇宙をいぶす香気の風の中から現れ出るのでしょうか?