極楽列車

はなが死んだのは平成18年4月27日でした。                          

その日は、以前から参加を決め会費まで支払っていた所へ会社帰りに出かけるつもりでしたので、帰宅は22時を過ぎてしまうはずでした。どちらかというと、付き合いが悪いタイプの私・・誘いは少ないはず。しかしこの日に限って、周りから不思議なくらい強引に押されたり、引かれたりで、泣く泣く、仕事の延長線上のお付き合いの場に出ることになり、夕方になって急遽予定を変えざるを得ませんでした。その結果、帰宅は予定より早く21時前になりました。

最近は耳も目も足も弱り、ぐったりとした様子で眠る、はな。いつものように眠っている、はな。いつものように体を揺すって、「はな」と呼びかけました。しかし、いつものようには瞼が開きませんでした。体は温かいのに、抱き上げると手も足も力なく、呼吸の気配がありませんでした。誰にも気づかれず息を引き取っていました。私の急な予定変更も、はなが呼んだのかもしれません。

別れの涙も乾いて、ぼんやりとしていると、「今年は戌年だった。」と、神社で見かけた絵馬が柴犬のようだったことを思い出しました。その後、ある日ふと、「丑の日というのがある。」と思って、暦を調べてみると、平成18年4月27日は丙戌年の丙戌の日でした。そして、最近になって、「丑三つ時っていうけれど。」と、時刻にも十二支があるかと思って検索してみると、どうも午後8時前後の2時間のようです。もしかすると、はなが息を引き取ったのは戌の刻だったかもしれません。

十二支の戌が重なったこと、何か暦的な根拠・・というのもおかしいけれど・・があるかしらと落ち込みつつ妄想的に深刻になっていると、ある人に「一本筋が通っているでしょ。その犬はね・・・極楽に行ってますよ。」と極めて単純明快、明るい日の差すような回答を得ました。

「成程。」極楽に行ったと思えば、喪失感で寂しさの中をさまよっていたような気持ちがすっきり納まりました。極楽列車、丙戌花号。ありがとう、はな。