!オブローモフ!

ベースボールドッグミッキーが亡くなったニュースを知った時、偶然机の上に、「ヌレエフの犬」(エルケ・ハイデンライヒ著 三浦 美紀子訳/ 三修社)という絵本を置いていました。以前から読みたいと思っていたのですが、今年に入ってやっと購入しました。

もう一度開いてみました。

題名に、「あるいは憧れの力」と書き添えてあるように、「憧れの力」が主題だと思います。「憧れ」は幻のようにはかないものではなく、情熱の種。目の前の現実を変える力を持っている。

バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが、人生の最終章をともに過ごした犬は、「オブローモフ」という名前。
ヌレエフと一緒にバレエの稽古場に通い、ピアノ近くに置かれたクッションの上で寝そべって、ヌレエフの踊りを見飽きることなく見て過ごすうちに、「バレエ通」になってゆくのです。

・・・ねそべって、見て、聞いて、床の振動を感じた。言いようのない憧れが彼の胸をよぎり、ときに、短いがすさまじい叫び声となってその口から出るのだった。

やがてヌレエフは亡くなりますが、年老いたオブローモフは、深夜にひっそりバルコニーの手すりを支えに、ジャンプやステップの練習を始めるのでした。

分かっているのは、これまでに何度も実際に目にし、夢の中でも見たことをやってみたいという意欲、それがあることだけは分かる。

そして、ヌレエフからオブローモフを預かったピロシュコヴァの前で、「見事なガブリオール」をやってのけ、ヌレエフに捧げられた白バラのまっただなかに着地するのでした。
また、階段の踊り場で、ジャンプ、スブルソー、そして完璧な着地。

ミッキーは、球場に行くのを楽しみにしていたということですが、その心の鏡に何が映っていたのでしょう。
深夜誰もいないところで、素振りや、投げたり、捕ったり、走ったり、野球の練習をしていたかもしれません。