午前のしあわせ
誰も見ていないのに、ウレシハズカシの気分で、
「えへん!どう?素敵でしょ?!」
誰も見ていないのに、なんだか足元が大きくピカピカ光ってる気分!
と、羽が生えたかのように足元も軽く、買った翌日にすぐ勤め先に履いて行きました。ちょっとバレエシューズのような顔をしたペニーローファー(という種類らしい)、肌色でヒールがないのが、自分の足の一部みたいに一体感があって動きたくなる。
そっか~♪アップグレードね、すべてのTPOね、
ニュアンスね、まさしくフットウェアね!
あまり意味もわからないようなカタカナ言葉に気分よく乗せられて、心の中でリフレイン~!ただの宣伝かもしれないけれど、背景に心を持った人がいるって感じられるような気がして。
が、しかし、
午後からとっても足が痛くなってきました。椅子に座っている時は半分脱いでる状態・・不自然なくらい立ち上がりませんでした。仕方なく歩かなければいけない時も、ソロリ・・ソロリ・・・ついには、お隣の席の人に八つ当たりなんかして。
もう、このままっどうやって家にたどり着こうかと・・・道路の真ん中で、思わず両方脱ぎ捨てたくなってしまいました。足を入れる部分が大きく空いている形なので、以前の経験から少し小さめを選んだ、私のサイズ選択のミスです。
そして、翌日の朝。
昨日の靴をめぐる私の午前の幸せと午後の涙の一人芝居を、誰も何も気づいてはいないはず。
買ったばかりの肌色の靴は諦め、靴的には内心、放心状態なのに、罪のない人がデリカシーもなく、いきなり正面から、「あれっ?!昨日の靴と違うね!」と、目を見開いて足元を見つめます。私の昨日という過去の古傷が痛みます。
「・・・足痛いの・・・」
顔も目も見ず、ボソッと低い声で答えたような、つぶやいたような・・・。すると更に、がっかりと肩が落ちてるのに、背後から追い討ちをかけるように、
「ヤッパリ、シンデレラになれなかったんだ!!」と、とっても元気よく納得されてしまいました。
今更シンデレラを持ち出されるようなプロフィールは、全く持ち合わせていないけれど?もし仮に今舞台人であったとしても、きっと回ってくるのは意地悪お義母さまか、魔法使いでしょ。
と、考えすぎのひねくれすぎ。
そういえば・・12時に急ぎ過ぎて両方の靴を履いたまま立ち去るか、両方脱ぎ捨てて去るかのキャラクターがだんだん身にしみてきて・・・。
「・・・今度、片方だけ脱いで、置き忘れる練習しておくんだから・・・」
なぜかそんな結びで終わるのでした。