1!フレンチスタイル

広島市民球場へは、野球を観るためには一度しか行ったことがなく、今でもカープのチームにどのような選手がいるのかほとんど知りません。
しかし、ホームページで、カープオンラインショッピングを見ていて、購入したいと思ったものが高価でしたので、ネットで購入する気にならず、見定めたいと思って問い合わせし、販売部に足を運びました。


販売部・・・夏に涼しげな明るいオフィスを想像していました。しかし、訪れてその落差にしばし呆然。雰囲気が全く「昭和」でした。
試合時、屋外のワゴンでグッズ販売されているようですが、その延長線上にあるといった風で、何か風の噂に聞く古さ・・・の凄みのようなものを垣間見たようでした。
その瞬間、広島市民球場の背負ってきた現実や歴史の波が、暑い空気と一緒にわぁっと押し寄せてきました。「オペラ座の怪人」ではなく、「市民球場の怪人」が確かにいる。大きな黒いマントを翻し風を起こしたかのようでした。


愛想のよいオフィスレディとは、またイメージが違う職員さんが、あっさり、私が欲しかったものは「全てない」と宣告しました。
他に人がおらず歓迎されていない、場違いだったかもしれない自分に落ち込んで、小さなキーホルダーを手にしてすごすご帰ろうとすると、「ほい!」と赤いグッズカタログが目の前に差し出されました
。裏方らしい、「おやじさん」「おっさん」といいたくなるような、おじさんでした。開いて見た後のように新しくはないけれど、ありがたく、うれしくいただきました。

華やかなグランドの裏で、ずっと、じっと働いてきた人達がたくさんいる・・そういうことがじんと心に伝わってきました。

「古い球場は劇場空間と似ている。」そう思いました。フランス映画「天井桟敷の人々」のイメージとぴったり重なってしまいます。
広島市民球場を「フレンチな球場」と密かに呼ぶことにしました。音楽で言うと、なつかしのシャンソン風。確かに、試合も「エスプリ」がきいているかもしれない?
野球はアメリカが本場だろうし、欧州スタイルの野球があるかどうかは知らないけれど、今時のアメリカ野球の賑やかさはちょっと苦手。


古い球場が失われてゆく秒読み段階に来て、はじめて市民球場に出会った一市民です。以前は毎日のように球場脇の歩道を通っていたのに。