夢見るトマト

ある会食で、朗らかな20代の女性と同じテーブルになりました。屈託がなくて、出席するかしないか最後まで迷った気持ちもふっ切れて楽しい!初めて会ったのに、ついこの間の失恋話を包み隠さず面白おかしく話すので、私も深刻にならず軽く聞き流していました。

だけど、危うく病院のベッドで点滴になる所だったとサラリと言ったことばに、サラダのトマトの上でフォークを持つ手が止まってしまいました。
「辛かったんだ・・・」
彼女の苦しみや嘆きが情景として、私の心に伝わってきました。周りは華やかな会食の席で、急に「ジゼル」の世界に入ってしまいそうになっていると、
「トマトおいしいですよね!」と彼女の話は続きます。

トマトを丸ごと沸騰したお湯の中に入れてさっとくぐらせ、湯剥きしたあと冷たくして毎日のように食べていたとか。彼女のトマトを食べる時のジェスチャーが夢見るようにおいしそうで、私までトマトに対して目がハートになってしまいました。

ジゼルの花占いのひな菊の代わりに、真っ赤なトマトを差し出してあげたくなりました。