芸術家

ルドルフ・ヌレエフは映像でしか観たことがありません。最初は、有名なダンサーらしいとしか知らなくて…ドキュメンタリー等映像でたどってゆくと、優れた振り付け家であったとわかりました。

「華麗なるダンサー/ルドルフ・ヌレエフ」(シアターTV)でのインタヴューで、バランシン(ストーリーやロマンティックを削ぎ落とし、音楽の美しさを表現する傾向の作品が多い人だと理解しています)の振りつけ方法について、ひとつの作品ができあがるまでをとても判りやすいことばで、明解に的確に説明していて、思わず身を乗り出してしまいました。

さりげなく語っているけれど。

苦手な数学の問題が解けてひとつの答えが見つかる感覚に似てる。

上手く言えないけれど、以前読んだ岡潔さんのエッセイに書いてあった、マチスの絵の説明に抱いたイメージみたいな、このバランシンの振りつけに対するヌレエフの視点。

美の真髄に触れる均衡や調和の理解のひとつの雛型というとおおげさだけど、それを、とてもオシャレに、「実にウィットに富んだバレエ・マイスターだった」とサラリと軽く締めてました。

♪ミスターBの法則~ヌレエフ流バランシンの振りつけ方法の解説♪

第一条 まず、ピアニストに曲の一部を弾かせテンポをチェックする。
第二条 レコードも聴いて、戻ってきて、テンポを決める。
第三条 テンポを指示・確認する。
第四条 次に一番最後の曲のクライマックスをピアニスト弾かせて、
≪♪タンタン♪≫イメージする。
第五条 ポーズやピルエットを決める。≪“いいね”≫
第六条 その前のクライマックスを弾かせて≪♪タンタン♪≫イメージする。
第七条 別のポジション・振りつけを考える。
第八条 またその前のクライマックスは?といって、曲の前へ前へ戻ってゆき、
第九条 さあ、これで振り付けができた!

踊り手であるヌレエフたちは、最初から踊り始め、そして彼(バランシン)は振り付けをし、頂点に達してゆく。そして、彼は最初からどう終わるか、そしてクライマックスの前後もわかっている。